「写真展にて」

 私の語る現地報告を聞くことで、参加者各人の頭の中には想像上のビルマ(現地)が生み出されていく。私の提供する情報によって、多種多様な人・考え方をする参加者に、一つの共通な幻想が生み出されていった。それはどういうことなのか?ビルマでの厳しい状況を話す一方、私の脳味噌は別のことを考え、感じていた。
  一体、私は何を喋っているのか。おとぎ話を話すように、現地のことを説明している。それはまるで「物語」の語りだ、と。その「物語」はその時、単なる抽象的な単位ではなく、その場と時間を支配、共有していた。つまり、人が同じ時間に身体性を伴って、同じ時空間を共有しているという現実を説明していた。その「物語」はどうやら、その場を共有するという雰囲気からのみ生み出されているモノであった。私は話を続けながら、その場を支配している異様な雰囲気を感じていた。

  その正体は、一体何なんだろうか。私は、まさに自分自身が祈祷師(シャーマン)になったような気持ちになりながら、自分にも酔っているようだった。   場と時間を共有することによって、日本人、ビルマ人を超えて共有できるモノとは、さて、何なんだろうか。

 国際政治学的な観点から、東南アジアで一番古い軍事独裁国家体制を改革するのは容易ではない。ただでさえ難しい社会変革の作業を、この軍事政権に当てはめてみると、その可能性はほとんどゼロ、絶望的にならざるを得ない。
 だが、人間は絶望を糧に前には進めない。やはり小さな光とはいえ、希望を追い求めるのが人間である。

 


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