「広告商品を手にしたアルキメデス」

 この広告の先兵をなすのが、ある種のイメージを頭に植え付ける画像情報なのだ。その一番影響の大きなものは、やはり毎日垂れ流しにされるテレビの映像であろう。視覚に訴えるイメージ画像。その意図することをキチンと見定めないと、自分の感覚が狂ってしまう。
 楽しい生活を夢見させる海外旅行の広告かと思えば、不安をあおる保険の広告が流れる。絶対にあり得ない荒野を走る4輪駆動車の広告。言葉で訴えずに、イメージで訴えてくる。そこで、ちょいと立ち止まる必要がある。イヤ、立ち止まることに恐怖を覚えさせる現代。だからこそ、敢えて生活環境を変えてみることが必要だと思っている。

 私自身写真を撮っていて、自分の写真が撮影意図に反して一人歩きするのも怖いものだ。だが、戦争や貧困、援助や国際協力さえ商品に仕立てる現代社会にあって、どういうスタンスを取ればいいのか。分かっていても、時に迷路に迷い込む。
 海外に出るのは、その立ち止まる、手っ取り早い手段の一つだと思う。安易な考え方だが、それでいいと思っている。そこで人が変わるか、変わらないかは、その人次第だと思うからである。変わらない人はいつまでたっても変わらないはず。
 広告に躍らされて自分を見失ってしまうと、気づかぬうちに、モノではなく「商品を手にしたアルキメデス」となってしまうのが現代社会の一側面である。

 

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