「自分のために」

 「彼は(石原)自分のために戦い、自分故に破れた。」
 今、石原氏は東京都知事である。かつて、氏の醸し出す「苛烈さ、過酷さ」にノーを突きつけた東京都民は、現在はそれを積極的(得票数を見れば一目瞭然)に受け入れている。都知事選に投票した、誰もが権力者の過酷さが自分の方に向かないと思っている。しかし、誰かがスケープゴートになっているうちはいいが、そのうちその役割が自分の方に割り当てられるかもしれないのに。

 現実問題として、日本社会は変わった。それをまず受け入れなければならない。考えなければならないのは、どうして彼(石原氏)が受け入れられる土壌ができてしまったのか、ということだ。力の論理が今、東京・日本を含め、世界を動かしている。個人活動している自分は、はっきり言って、怖いな、と思う。でも、コワイコワイ、とばかりは言っていられない。ビルマやグアテマラから見ると、日本社会はまだ、「それ以上でも、それ以下でもない」生活をしているように思える。

不安を抱えながらも、微妙なバランスを保ちながら生活しているようだ。今の自分は、自分のできる役割をどう果たしていくのか、自分なりに小さな声にどう耳を傾け、意識し続け、行動し続けるしかない。それには、まずは自分の身を守る戦いをしていかなければならない。強者だけの歴史を残してはならない。

 グアテマラのファーストフード店。お代わりした2杯目のコーヒーも冷え始めた頃、石川さんにこう話した。
 「個人的には、足立君には『平和』を語ることだけの活動を続けてほしくないなあ。平和を語る正論はもちろんだが、まずは自分自身のために戦い続けてほしい。自分を信じる力、それが説得力を持つものなら、彼の動きは広がっていくだろうから…。」

 

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