胸の奥が締め付けられ、一気に感情の波が押し寄せた。5年前、エルサルバドルの停戦の時でさえ、我慢して流すことのなかった涙が、目の奥からジワリと浮かんできた。しかし、泣くまいと唇をかみ切りながら、踏ん張った。涙が流れないように目をぎゅっと閉じた。ここで泣いたら、彼に顔向けできない、と。その時、土曜日の深夜のラジオが、いつものようにお笑い番組を流していた。乾いた笑い声だけが部屋に響いていた。
 西山氏は、カレン族との出会いを「成り行き(縁)」だったと話していた。大学を中退し、冒険心を抱いて東南アジアを回っていた20代半ば、彼が出会ったのは半世紀に及ぶビルマ辺境の武装抵抗闘争であった。彼は最初、戦場という強い刺激のある場に、生き甲斐を求めたのかもしれない。だが、カレンの自由を求める戦いに参加するにつれ、彼はカレンの闘争を深く理解するようになった。


 「カレン族というだけで略奪され、虐待され、果ては命まで奪われ続けていた。」 
 彼は、放ってはおけなかった。また、若い彼は知りたかった。カレンが軍事政権の容赦ない暴力に屈することなく、どうして半世紀もの間(今年、内戦52年目に突入)闘ってこれたのか。彼がそこで見たものは、自由を求める人間の力強い姿であり、困難な中でも助け合おうとする人間同士の優しさだった。


   


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