昨年の暮れのことだった。その日は、友人のゲストハウスで夜遅くまで喋りすぎた。夜11時を過ぎてしまった。首都ラングーンの目抜き通り。町の中心であるスーレーパゴダ(仏塔)前を通りかかる。街灯のある通りといえど、薄暗い。ちょっと離れたところでは明かりの全くない通りさえある。これが一国の首都なのか。いつも感心してしまう。約15分ほど歩き続ける。暗闇で誰か座っているのに出くわした。ビルの谷間、月明かりのない真っ暗な中で人の気配を感じ、心臓が縮み上がった。顔は判別できないが、眼はじっとこちらの様子をうかがっている。もちろん路上生活者ではない。
誰だ? 頭の中が素早く回転する。あ、そうか、例の人達か。誰だかすぐに分かって安心する。危害だけは加えられないだろう。それにしても不気味な存在だ。
彼(彼ら)の存在に気づいたのは、ラングーンに滞在し始めて数ヶ月目のこと。これまで十数年、ビルマに通ってきたが、初めて目にした人達だった。
|
|
後で地元の人に聞くと、「昔から居たよ」という。 夜9時以降くらいから出没し始める。腕に赤い腕章をしているから、それとすぐに分かる。彼らは夜の間、通りに不審な人物が動き回っていないか監視する男達なのだ。軍関係者や政府関係者ではない。自警団ほどの役割はないが、住人が自分達の住む地区を持ち回りで監視しているのだ。
|