「スーチー…(後編)」

 ビルマ人であるTが、私の住むゲストハウスへ頻繁に訪れるのはやはり危険である。部屋への出入りを近所の人に見られているからである。彼の家へは友人と一緒に訪れたことがある。それもたった1回きりだ。 「本当は私の家で食事をごちそうしたいんだが、君は『危険』すぎるからそれもできないなあ。」 彼の声は、申し訳なさそうに小さくなる。相互の監視体制と密告は、あちこちで張り巡らされている。

5月半ば、ビルマ初のインターネットカフェがオープンした。早速行ってみた。使用するには申込書の提出が必要だ。自分の名前や職業だけでなく、父親の名前や職業まで記入しなければならない。もちろん注意事項がある。政治とポルノに関するページの閲覧は禁止。もっとも、閲覧できるホームページ(HP)は限られていた。HPのアドレス欄に“.jp”の付いたページのほとんどは、アクセス制限されている。ちなみに、携帯電話は1回線がUS$3000〜US$4000もする。固定電話さえUS$2000以上する。一般の人には高嶺の花である。

 あちこちで情報制限がある。また、口コミで現地の人から情報を得ようとしても、彼らとの接触は十二分に気をつけなければならない。外国人はビルマ人に悪影響を及ぼすと軍政府は頑なに信じている。国営紙には毎日、4つの“People's Desire”が明記されている。 “Oppose those relying on external elements, acting as stooges, holding negative views”“Oppose those trying to jeopardize the stability of the State and progress of the nation”“Oppose foreign nations interfering in internal affairs of the State”“Crush all internal and external destructive elements as the common enemy”簡単に言うと、「国家の安定と発展を妨害するような外国(人)からの悪影響を排除しよう」ということだ。もっとも、ビルマ人に悪影響を及ぼさない、政治に無関心の旅行者は歓迎される。軍政の監視体制を感じることなく、軍政府の存在に不満も言わず、無条件で外貨を落としてくれるからだ。

   


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