「『私の敵』が見えてこない」 by 宇田有三 

 SPDCは、 権力の基盤が弱くなったその時、 いよいよその一番やっかいな民族問題の解決をNLDに担わせないだろうか。NLDが民族問題を解決した背後で、 自らの利権の温存を図ろうとする構図が見え隠れする。もし、 失敗したなら、 NLDの統治能力に烙印を押すことができる。
 また、 形だけの民主国家では、 辺境地域に住む民族集団への合法的な抑圧が引き起こされる恐れがある。 天然ガスや鉱物資源、 かろうじて残っているチーク材など、 豊富な天然資源を求めて、 多国籍外国企業が辺境地域へ入って行くはずだ。 共同体中心の生活を送ってきた辺境の諸民族は、否が応でも国際経済の枠組みに飲みこまれ、 資源収奪の目的のため、 自らの生活の場を追われる状況に直面するかも知れない。

 NLDは当面、 「民政移管」という、 極めて困難な政治課題を乗りこえなければならない。 だが、 同時にこれまで日の目を見てこなかった辺境民族の人々のことを考えながら、 政治の表舞台に立たなければならなくなった。 ・・・後略・・・。」

私のビルマとの関わり合いは当初、主にタイ国境で武装抵抗を続ける民族集団の一つ、カレン民族との接触だった。そのせいか、取材開始からこれまでの11年間、ビルマの問題は、実は民族問題だとずっと信じてきた。軍事政権と停戦した10以上の民族集団の他にも、未だ武装抵抗している民族、シャン、モン、カレニ、アラカン、チンなどが依然として存在している。ところが今回、半年近いビルマ滞在で、この考えが揺らぎ始めた。

   


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