偶然、英語を流暢に話すジュンさん(47)と話をするようになった。
  「おれはアメリカの永住権を持っているし、インディアナとフロリダではタクシーの運転手をしてたんだ。」
 ジュンさんの恋人、ルビーさん(32)はこれまで3度、日本に出稼ぎに行ったことがあり、片言の日本語を話す。温泉や民宿で働いていたそうだ。最初、ジュンさんの話を冗談混じりに聞いていた。だが、彼の家に遊びに行き、アメリカの永住権カードやインディアナ州発行の免許証を見せてもらい、びっくりした。彼の話は本当なんだ、と。
 「じゃあ、なぜ、ここでスカベンジャーとして働いているんだ。アメリカに戻って、仕事探しをした方がいいんじゃないのか。」
 「いやねえ。このルビーと一緒にアメリカに行きたいから、今、その手続きをしてもらっているのだ。」

 

ルビーさんは、アメリカ行きの話はあまりしたくないらしい。実は彼女には、日本人との間に2人の子どもがいるのだ。
  「日本の旦那はどうしたんだ?」
  「突然、連絡がこなくなった。」
  私に、その日本人から送られた最後の手紙を見せてくれた。それには、東京の住所が書かれてあった。フィリピンに来て中米を感じ、そこにアメリカと日本が関わってきた。私の頭は混乱し始めた。
 

 ジュンさんは、ゴミ拾いの合間に、ふと漏らした。
  「こんなスカベンジャーたちの姿はフィリピンだけだろう。ほら、みんな必死になって働いているけど、どうにもならないんだ。仕事がないからなあ。

   


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