この事故は世界的に大きく報道され、フィリピンの第2の「スモーキーマウンテン」── 改め「スモーキーバレー」の存在は広く知られるようになった。フィリピン政府は再度、このごみ捨て場を閉鎖した。
  ごみ捨て場が閉鎖されている間、スカベンジャーたちは生活の手段を失い、政府や市民団体が配る救援物資に頼る生活をした。4カ月後、閉鎖されたごみ捨て場は再開され、事故の前と同様にごみが捨てられるようになった。再び、ゴミ拾いに汗を流す人の顔に笑顔が戻った。自らの労働で生活している誇りが戻った。
 あれから約1年半、フィリピンの人でさえ、パヤタスのごみ捨て場は閉鎖され、ごみ捨て場とそこで働く人びとの問題はもうなくなったと思っている。しかし、そこにゴミがある限り、生活手段を持たない人びとは集まってくる。それが現実なのだ。

   崩落事故以来、チェックポイントの責任者は、外部の立ち入りを制限している。もし何かあれば責任を負わされるのは地元の行政関係者だからだ。チェックポイントから、トラックがゴミを捨てている現場まで、歩いて約10分かかる。崩落事故があった古いごみ捨て場とその横にできた新しいごみ捨て場は、約20ヘクタールの広さがある。また、ごみ捨て場の取材も、事故の前は自由だったが、今は正式の取材申し込みが必要になった。
 ごみ捨て場に毎日通うようになって3日目、チェックポイントの責任者は、「なんだ、また来たのか。どうして毎日写真を撮る必要があるのだ」。明らかに嫌な顔をするようになった。しかし、ごみ捨て場の現場は全く違っていた。最初は不審な顔をしていた人たちも「やあ、また来たか」と気軽に声をかけてくれるようになった。
   


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