テーマ設定や被写体(モチーフ)選びなど、自分の納得のいく写真撮影は実に手間がかかることばかりである。時に無駄だと分かっていても現場に足を運び、人と会い、失敗し、失望する。その繰り返しである。
  それでも写真を続けているのは、簡単に答えが見つからない作業だからだ。それが徐々に分かってきたからだ。効率を求める態度では、全く続けることはできない。さらに、たとえいい写真が撮れなかったとしても、それはそれでいいという覚悟もできてきたからかもしれない。取材や撮影をきっかけに知り合い、出会った社会や人はかけがえのない財産だからだ(もっとも、自らをさらけ出してくれた被写体に対する責任感はいつも痛感する)。

  いったい何をしたいのか。具体的に動けば、具体的な答えが、少なくとも返ってくる。ああでもない、こうでもないと部屋の中で考えているよりも、自分に興味がありそうだと思ったら責任を持って動くことである。
  この責任の欠如がまた、大きな問題である。自分の頭の中で考えているうちは、なんら責任は発生しない。動けば、まず、自分の予想もしなかった事柄が発生する。解決方法は、自分で見つけるしかない。それには責任が伴う。それを避けたい。そういう風潮も今の社会に感じる。人と人とが一緒にいれば、ぶつかり合いがある。それを避けては生きていけない。逃避の傾向。だから思考停止に陥り、自分と自分の周りの小さな世界以外に対しては無関心になる。
   


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