一目の前に展開する情景の深さに、シャッターを切れなかったことがある。
家路を急ぐ4人家族の姿を目にした時だった。中米・エルサルバドルの山奥、反政府ゲリラが作り上げた村でのこと。首都サンサルバドルから車で北東に約3時間、ホンジュラス国境が近いウスルタン州の山の中。内戦が終わった直後の1992年2月のこと。平和な村祭りを楽しんだ一家は、山深い村の、さらに奥に位置する家に帰って行くところだった。
お父さんは右手で幼い娘の手を、お母さんは男の子の手を握っていた。
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長くのびる影と短い影が重なったり、離れたり。4人そろった後ろ姿に夕陽が映えている。暖かく柔らかい光が、温かい風景を作りだす。絵になる風景だった。「家族っていいな」と思った瞬間だった。
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