グアテマラのインディヘナと呼ばれる先住民族たちやエルサルバドルの軍政に抵抗していた人たちは人間扱いされてこなかった。50年間戦闘の続くビルマ辺境のカレン人たちは現在も粗末な武器を持って軍政権に抵抗している。
 人を殺すとはどういうことなのか。人が人を拷問して、苦しむ有様をみるとはどういうことなのか。主義主張に反対するヤツは人間扱いしない、そういうシステムがあることに気づいた。そのシステムを支えているのは人間であり、無関心だと気づき始めた。
 時間がたてば衝撃的な出来事も忘れられ、記憶からも消えていく。

それなら、新しい出来事だけに飛びついて取材するという生き方を選んでいけばいいのか。私は、自分の身の丈に合った、にあった方法で人に接し、彼らの生きてきた姿を記録していこうと思っている。それゆえ、いったん関わりをもったからには、事件が起きなくとも定期的に中米や東南アジアの辺境のジャングルに足を運んでいる。
 エルサルバドルでフォトジャーナリストという仕事をスタートした。それ以後さまざまな地域で、多くの死をや別れを経験したきた。92年にエルサルバドルで喜びで涙を出してから、決して悲しみや怒りで涙を流すことは今はなくなった。私の切望する歓喜の涙はいつ流せるのだろうか。

 


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