私がエルサルバドル入りする直前の昨年3月、米国大統領としては30年ぶりにクリントン大統領がニカラグア・ホンジュラス・エルサルバドル・グアテマラを歴訪した。
 「ドミノ理論」を根拠に米国政府は80年代、市民を恐怖のどん底に落とし込んだ中米各国の軍事政権に対して、異常とも思える軍事技術・財政援助を続けていた。政治的に東西冷戦の表舞台となったこれら中米四カ国は当時、内戦の嵐が吹き荒れた。産業振興よりも米国の援助によって国を支えられていたこれらの国々は、債務危機に陥り、中南米のいわゆる「失われた10年」を代表することになった。
 中米歴訪の最後の訪問地グアテマラでクリントン大統領は、米国の過去の中米政策を謝罪し、新たな関係を築いていこうと語った。ねらいはもちろん、新しい経済関係である。中米諸国ではこれまでの富裕層に加えて、米国主導のネオリベラリズム(新自由主義)で経済的な機会を握った一部の人たちが富を蓄えつつある。その牽引役を米国が担っている。戦闘・誘拐・拷問と分かりやすい形での支配は陰を潜めている。現在は、ネオリベラリズムという形を変えた新しい植民地主義が根を深く張っている。
   


This site is developed and maintained by The Perth Express. A.C.N. 058 608 281
Copyright (c) The Perth Express. All Reserved.