確かに、誰かが桟橋の入り口からまっすぐに僕のいる方に歩いてくるところでした。僕はひざの震えをおさえて立ちあがると、身構えました。その足音には、なにか大変な運命が宿っていて、そして、そいつが僕の人生のドアをこれからノックしようとしているようにも感じ取ることができました。
 もう、じたばたしても始まらない。僕はそう自分に言い聞かせてから、足音に向かって目を閉じると、運命のその瞬間を待ちました。

一体どれぐらいそうやって目を閉じたまま突っ立っていたのでしょう。
 それは不思議な時間でした。
 何時間もそうしていたような疲れが確かにありましたし、何も考えることのできない一瞬の出来事だったようにも思えたのです。
 そして、決して忘れることのなかったミントの息をすぐ近くに感じた時、「MORIO」と、僕の名が呼ばれたのでした。

つづく
 


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