電車に乗って窓の外を流れる景色をぼんやり眺めていると、なんだかオーストラリアに来てから今日までの月日が、夢のように感じられて仕方がありませんでした。街に向かう、すれ違う電車には、たくさんの人達が乗り込んでいました。一方、自分の乗っている車両には、郊外の国立公園にハイキングに行くらしいカップルが一組、ひっそりと乗り合わせているだけでした。
 その時、僕は突然、何の脈略もなく、ひとり群れを飛び出してしまったような不思議な気持ちになってしまいました。どうして人々は同じ方向に群れをなして進んで行ってしまうのだろう?そして同じ方向に皆が進んで行くと、一体どういう事が起きてしまうのだろう?

 僕は、その日一日、郊外の国立公園で過ごしながら、ずっとその事を考えていました。例えば、有名なファーストフードのお店は、調理してから5分か10分を過ぎて、オーダーの入らないハンバーガーは、その場で全部捨ててしまうのだそうです。単純に、もしも、そのハンバーガーを飢餓で苦しんでいる国の人達にあげられたならどんなにいいだろうと思います。また、屠殺場(とさつじょう)で、首をはねられる牛たちもそのままゴミ箱に捨てられる。ハンバーガーになる運命だと知ったなら、たまらない気持ちになってしまうんじゃないでしょうか。

   


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