周りの人が、振り返って僕を見て行きましたが、別に気になりませんでした。それよりも、縫い目を入れるだけで、 昨日と同じような“気持ちの休まる思い”に戻れたことが、うれしくてしようがありませんでした。そして書いているうちに、二つに引き裂かれて行こうとしている地面を僕がつなぎとめているような気持ちになれて、またまた、夢中で縫い目を入れ続けたのでした。
  その翌日は、もうどこでも一緒だと気づいて、バチェラーのまわりから手当たり次第に、縫い目を入れていきました。
その次の日も、その次の日も同じようにして過ごしました。

 6日目に雨が降り、雨が3日間も降り続いてしまい、せっかく縫い合わせた地面が、また元に戻って、パックリ口をあけたように見えたとき、僕は決心しました。“ようし、残りのお金が続く限りこの‘仕事’を続けるぞ。”
  縫い目を入れているとき、不思議と普段モヤモヤしている気持ちを、忘れることができました。そして、うまく言えないのですが、なんだか自信のようなものを感じることができたのです。

 僕は、秋から冬の間、縫い目を入れては歩き回りました。キャシーズで働いて貯めておいたお金は、もう残り少なくなってしまいましたが、兄貴の言っていた好きなことを続けるだけでいいという言葉を、今は信じて進むことができるような気がしました。
つづく

 


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