「でも、学校の自習の時間なんか、先生がいなくなった途端、みんな好き勝手なこと始めて、教室中がメチャクチャになっちゃってたよ。兄貴の言うみたいにみんなが自分のことばかり考えて好き勝手に暮らし始めたら、世の中全部が
“自習の教室”みたいになっちゃうんじゃないのかなあ?」
「好きなことと、勝手なこととは違うだろう? それにみんなが自分のことばっかり考えたらって言ってたけど、じゃあ、自分が何者なのかも分からないうちから、よその人のことを考えて生きていく方がいいのかい? まず、自分から始める。それしかないだろう? それで、始めてみたら、てめえがその“自習の教室”みたいになっちゃったんだとしたら、ああ、オレって人間はとことん“はずれ”だったってことで、もうあきらめるしかないんじゃないか?
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みんなと一緒に助け合ってなんて、本当はなかなかできる事じゃないんだよ。」
兄貴の話を聞いていて、結局、僕はひとり生きていかなければいけないんだと思いました。人を頼るなと言っているのかもしれないとも思いました。そして、なにか突き放されたようで、とても寂しい気持ちになったのも確かでした。
「MORIO、人は一人この世界にやってきて、かならず一人でまたここから出て行かなければならないんだよ。だから、その間に、なにも嫌いなものなんか選んでやる必要はないんだよ。」
布団に入ってからも、もうずいぶん長いこと会っていない兄貴の言っていた言葉がいつまでも続けて思い出されて、 とても眠れそうにありませんでした。きっと、こういうのをホームシックというのだろうなあと思いました。
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