バチェラーに戻ってから、僕は久しぶりに兄貴に長い手紙を書きました。書き始めてみると止まらなくなってしまい、気がつくと情けない話なのですが日本に帰ってもいいような気持ちになってしまいました。冬の夜、兄貴が帰ってくるのを待って出かけた、近くの屋台のラーメン屋での会話なんかが、突然、何の前触れもなく思い出されました。

 「ねぇ、どうして3回も結婚したの?」兄貴は3回結婚していました。
 「まあ、俺に甲斐性が無いということだろうなあ。」
 「甲斐性が無いと3回も結婚することになるの?」

 「平たく言うと、その都度逃げられちゃったんだから、しょうがないよなあ。」
 「逃げられるようなひどい事してたの?」
 「まあ、相手の期待にあまり応えていなかったんだろうなあ。それで敵もある時、ふんぎりをつけて出て行ったってことなんだろうなあ。」
 兄貴の奥さんはみんなテレビ関係の人達でしたから、僕から見るともったいないようなきれいな人ばかりでした。そして、兄貴の結婚にはいつも子供はいませんでした。
 「出て行かれていやじゃなかったの? さみしくなかったの?」
 「そりゃ、さみしいさ。だから、酒の量も増えちゃったし。なんちゃって。ひでえ言い訳だな、これは。」


   


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