なおも、一連の動きのまま（フィルムをカットしたり、つなぎ合わせたりすること無く）カメラは轍を追いかけていきます。この間に聞こえてくる音は、谷川の音と獲物を追う狩人のように、カメラを持った追跡する人のだんだん荒さをましていく息遣いと、そして少しづつ聞こえ始めるオートバイのエクゾーストノートです。谷の暗い景色から、視界の広い丘のようなところを横切り、途中何度も道の上に倒れている大木の上を乗り越えた轍を追いかけて行くと、最後にカメラは前方のたぶん行き止まりなのでしょう、大きい岩に向かってウイリー（前輪を持ち上げたまま、後輪だけで走るテクニック）

の姿勢を保ったままのライダーとオートバイを捕らえるのです。ライダーはなおも、自分の背丈を超える岩に挑み続けています。
　横に回りこんだカメラから、画面いっぱいに赤いトライアルマシンがズームアップされ、そして下から上にあげていくカメラアングルに従って、次第にバイクの上で巧みにバランスをとり続けるライダー、すなわち見事な女性美を発散する若い女の子がクローズアップされる仕組みになっていました。