全体で5分程のたぶん劇場用のコマーシャルフィルムで、画面を通していっさい音楽は無く、見る側の人が美しい冬のロッキー山脈の景色に引き込まれ、斜面に残るオートバイの轍に驚き、いつのまにかカメラといっしょに轍を追いかけていってしまう仕掛けになっていて、最後は兄貴の最も得意とするどんでん返し、かっこいい女の子が朝日の中で汗にぬれた額を輝かせながらバランスをとっているという落ちで終わるのでした。

 画面の最後にテロップで“轍”(わだち)というタイトルがながれ、スポンサーのメーカーのマークが浮かび上がって、フィルムは終わりました。僕と並んで息を殺すようにしてスクリーンを見つめていたトリプルピアスの男の子が、終わった途端「すっげー、これめちゃくちゃかっこいいフィルムじゃないか」と叫びました。僕はもう1回見てもいいかと断ってから、結局そこで2人して10回は見てしまったと思います。

   


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