小包の中には、一本のビデオテープが入っていました。僕の部屋にはビデオがありませんでしたので、どうしようかと悩んだ末に、近くのビデオショップに持っていって頼んでみることにしました。午前中のビデオショップに人影は無く、トリプルピアスの男の子は二つ返事でオーケーと言ってくれました。
 テープをセットしてしばらくすると、奥の大きいスクリーンに晴れた日のカナディアンロッキーかどこかの雪景色が映り始めました。カメラは固定されたまま、雪に覆われた山並みの全体を少しの間写してから、次第に“ある谷の景色”に向かって、ズームアップを始めて行きました。

 日の当たる谷の道の表面にオートバイのものとわかる轍(わだち)が一本残っているところまで引き付けておいて、初めのカメラアングルはそこで終わりました。
 次のシーンは、ハンディカメラで雪の上に残るオートバイの轍を追いかけるシーンで始まりました。ものすごい急斜面を登ると橋の落ちた小川が現れ、小川の向こうにまた轍が始まっていることや、道をふさぐ大木を難なく乗り越えて行っていることから、映像を見ている人はこのシーンでオートバイのライダーが大変なテクニックを持っていることに気づくようになっていました。

   


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