「MORIO、おまえは知らねえんだろうがこの商売にはルールってものがあって、ここじゃあ、生でキスしたりしちゃ
いけないことになってるんだよ。よくわかんねえんだが、ほら、病気のこととかあるだろ? うちの女の子達だって、おまえの知っている通り、月に一回は健康診断のレポートを出してるじゃねえか。」
「じゃあ、MADISONとか、スタジオ69とかどうなっちゃうんだ?」
「そんなこと知るかよ。だけどよ、噂であそこのオーナーが店を出す時に、なんでもうちのオーナーに挨拶しなかったらしいんだな。それで、うちのオーナーも黙ってるわけに行かなくなったんじゃねえかな。」
「それじゃ、まるで、初めから僕は当て馬だったんじゃないか。」
「おいMORIO、おまえ、なにそんなにムキになってるんだよ。MADISONとかいうねえちゃんがどうなろうと、おまえの知ったこっちゃねえだろうが…。」
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僕は、うすのろのチャーリーを突き飛ばすと、夢中で二階に駆け上がって行きました。オーナーの部屋にはすでに鍵がかかっていて、中に人の気配はありませんでした。僕は階段を駆け下りて引き返すと、凍りついたような顔で僕を見つめるドロシーの横を通り過ぎ、表の車寄せに向かいました。走り出した黒いジャガーの中に、間違いなくオーナーとカウンセルの女性の影が見えました。
「ジェラミー!」
僕は、運転手の名前を3回叫んでから、2ブロックの間、 ももが胸に触れるくらいに狂ったようにダッシュを繰り返しました。そしてついにジャガーが見えなくなった時、精根尽き果ててその場にしゃがみこんでしまいました。
僕はもうキャシーズには戻れないと思いました。公衆電話からスタジオ69に電話して、MADISONを呼び出してもらいましたが、忙しいという理由で、待っている間にまた電話を切られてしまいました。
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