僕は、幸せでした。こんなに、満たされた気持ちになったのは初めてでした。そして、もう何も考えたくありませんでした。
 やがて戻ってきたMADISONから口移しにミネラルウォーターを飲ませてもらったとき、神様、お願いですから夢なら覚めないで下さいと祈らずにはいられませんでした。
 僕たちはそれからいろんな話をしました。といっても、ほとんど僕が話していたようなものでしたが。彼女は僕の隣に添い寝しながら、ほんとうに楽しそうにしていました。でも、楽しい時ってどうしてこんなに早く過ぎていってしまうのでしょう。ほんとうに残酷だと思います。

 MADISONが少し落ち着かなくなり始めた仕草から、僕はもう残された時間があまりないことを知りました。
 「普段はどんな風に暮らしてるの?」と聞くと、「夕日を見るのが好きだわ」と答えました。そして、もっとずっとずっと長く夕日が見ていられたらどんなにいいでしょうと言って、少し寂しそうに笑いました。
 僕はシャワーを浴びると、シャツに手を通しました。そしてレースのブラジャーのフックを手伝ってから、部屋の入り口のドアの前で、もう一度、MADISONを抱きしめました。

   


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