イギリスのミッドランドのように人口の多い都市からやってきた者にとっては、西オーストラリア州の南西部に広がる深く未開の地であるブッシュの森は、恐れと畏敬の念を感じさせるものであった。実際には、危険なことなど一つもなかったが。
そこに到着したときは、私たちに敵対するものなど何もなく、 先住民や危険な動物もいなかった。私の母は臆病だったのでブッシュや外界から孤立していることに心穏やかではなかった。子供たちが迷いはしないか、川に落ちたりしないだろうか、蛇に噛まれたり牛に襲われることはないかといつもヒヤヒヤしていた。父はブッシュを切り開いて農地にすることに懸命で、そんなことには構っていられず、ブッシュの様子が微妙に移り変わっていくのをのんびり楽しんでいる暇もなかった。父にも、もう少し時間があれば子供のように情熱を傾けてブッシュを楽しんだに違いない。とはいえ、
子供たちがそばにいれば、父は仕事の手を止めて新しく発見した 自然の様子を私たちに教えてくれた。
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父は不必要に生き物を殺すことはなかった。常に捕らえたものは逃がし、子供たちが野生の花を採ったり動物たちを捕まえたりすることを禁じた。子供にとってブッシュは楽園だった。神秘的かつ刺激があって、未知の冒険にあふれてはいるものの穏やかで、恐れるに足りなかった。田舎、特にブッシュの奥深くで生活したことのない子供たち、それはしてもよい事、それはしてはいけない事と都会育ちの親に言われてきた子供達は、自然と近しくなることによってのみ得られる一体感や信頼感といった感覚を育てられずにきてしまう。
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