家族が一丸になって働く農場の生活には絆が芽生えるようになる。農場では、専門化され細分化された都会の生活に比べて、人生のあらゆる経験が身近に起こる。哲学的な分析や思索抜きで、出産、誕生、病、死といった逃れようのない営みを農場の動物たちを通して経験する。農場では、大きな牛肉や鳥肉の塊と屠殺の関係は直接的であるのに対して、食肉処理場や肉屋、ファーストフード店が間に入ると消費者と感覚や命を持つ生き物との間に距離が生まれてしまう。しばしば鶏を絞めたり、稀に牛や馬を殺すこともあった。作業は淡々と進んで行ったが、可愛がっていた牛や子牛が殺されるときは別で、
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悲しく、辛くなったものは大抵作業から離れた。しかし、映画「ベイブ」のファンタジーがあるにも関わらず、豚は牛や馬に対する愛着を持てない家畜だった。クリスマスや復活祭に豚を殺すことがあっても、動揺する者は誰一人としていなかった。
私たちの生活は規則正しい日常へと落ち着いて行ったが、行く手には暗雲が漂ってた。政府は集団開拓計画に次第に興味を失い始め、クリームの値段が下がり利子を払っていく負担に気落ちしていくようになった。だが、それも当面は先の問題で、私たちは現状に力を尽くすことにしていた。
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