春の気配が感じられるようになったパース。9月に入り、日中の気温も上がってきています。庭先の彩りも緑一色からカラフルになり、公園でも敷き詰められた緑の上に黄色やピンク色が躍る季節となってきました。一方、花の咲く季節を待ちに待っているのに開花時期には花粉が舞い、花粉症の人には心から喜べない複雑な時期でもあります。例年、8月後半から11月にかけてワイルドフラワ-と呼ばれる野生の花が咲き誇ることで世界的にも知られているパースですが、今回の【パースの医療現場から】は、花粉症について専門家に聞きました。
北半球の日本では3月、南半球では9月が春先となり、開花の季節。この時期はどうしても花粉の量が気になり、春の到来を喜びつつも花粉症の人にとっては憂鬱な季節となってしまいます。新型コロナウイルスで世界中、マスクの必要性が見直されていますが、それ以前にも日本の春先には花粉対策でマスクを付けている人を多く見かけました。メルボルンのビクトリア州では2回目のロックダウンでマスク着用が義務付けられましたが、近い将来、オーストラリアでも花粉症対策でマスク着用が一般的になる日が来るかもしれません。春先の花粉量は花粉症の人にはとっては、そのくらい深刻な問題でもあります。パースやメルボルンにて日本語で診察ができる日本語医療センターのマネージャー、千綿真美さんにオーストラリアの花粉症について伺いました。
写真:一部の写真はイメージです。
<オーストラリアの花粉症について話す日本語医療センターのマネージャー、千綿真美さん>
まず、オーストラリアの花粉事情について教えて下さい。
千綿さん:8月後半から9月に入り、雨が落ち着いて気温が上昇してくると、オーストラリアでも花粉症の時期が始まります。オーストラリアは、世界でも有数の花粉症を含むアレルギー疾患の発症の多い国で、特にここ西オーストラリア州は、オーストラリア首都特別地域に続いて国内で2番目に花粉症の発症が多い州となっています。
<西オーストラリア州は国内で2番目に花粉症の発症が多い州>
日本のようにオーストラリアでも花粉症は一般的なんですね。
千綿さん:はい。日本から来たばかりの人から『オーストラリアにも花粉症ってあるんですか?』とよく聞かれますが、花粉症などのアレルギーは世界中のどこでもあります。
そもそも花粉症とは?
千綿さん:人間の身体には、体内に侵入しようとする異物を排除するための免疫機能がありますが、本来は無害な物質に対して過敏に反応してしまうものを“アレルギー反応”と言います。目や鼻の粘膜にアレルギーが起こると結膜炎や鼻炎を起こし、鼻水や鼻詰まり、くしゃみ、目の痒みなどがみられます。アレルギーを起こす要因は花粉、ほこり、カビや動物で、花粉で起こるものを通常“花粉症”と言っています。
オーストラリアでの花粉症の主な原因は?
千綿さん:日本では、花粉症の原因というと“スギ花粉”が代表的ですが、オーストラリアで多いのは、様々な種類の芝(Grasses)です。どこもかしこも芝生だらけなので、なかなか芝生を避けることは難しく、他には松の木の一種(White Cypress PineやMurray Pine)や、アカシアの木(Wattle Trees)、そして雑草を含めありとあらゆる植物が要因となりえます。それらの開花時期は各植物にもよりますが、数ヶ月に及ぶものもあり、早ければ7月から年をまたいで4月または5月までとなっています。
<オーストラリアで花粉症の原因となっている松の木やアカシアの木>
日本では大丈夫だった人が突然、オーストラリアで発症することもありますか?
千綿さん:今まで花粉症になったことがなかった人も、ある年から急に症状が出ることはあります。これは日本にいても、オーストラリアにいても関係ありません。ある年、急に免疫システムが体内に侵入した花粉に反応を示し、目・鼻・のどのかゆみ、鼻水、鼻づまり、くしゃみ、頭痛やだるさなどを引き起します。
<様々な種類の芝もオーストラリアでの花粉症の原因>
花粉症に近いと思われる症状が出たら?
千綿さん:アレルギー検査は、日本では病院に行き即日で簡単にできる『皮膚のパッチテスト』が一般的ですが、オーストラリアでは特に重症なアレルギー症状でなければ検査は行われず、薬の処方を受けて対症療法となります。ただ、もしアレルギー検査が必要となれば、GP(General Practitioner/一般医)では、血液検査が一般的です。検査の中で『IgE抗体』という特殊なタンパク質の数値が上昇していると、“身体の中で何かに対するアレルギー反応が起こっている”という診断がされます。また、花粉や芝、およびハウスダスト、犬や猫、ピーナッツ類、大豆というような基本的なものに対するアレルギー反応を検査することもできます。しかし、それ以上の詳しい検査が必要とされる場合は、アレルギーの専門医への紹介を受け、専門医で皮膚のパッチテストが行われます。乳幼児の場合は、血液検査より専門医でのパッチテストが勧められることが多いです。
花粉症と診断された場合、治療はどうなりますか?
千綿さん:花粉症の治療には、抗ヒスタミン剤やステロイド剤の目薬、鼻のスプレーや内服薬がそれぞれの症状に応じて使われます。抗ヒスタミン剤は、ドクターの処方箋なしでも薬局で直接購入することができますが、ステロイド剤は処方箋が必要です。花粉症なのかどうかわからない、どの薬を使えばいいのかわからないというような方は、まずはドクターの診察を受け、適切なアドバイスをもらうことが先決でしょう。
<花粉症の症状を感じたらドクターの診察を受けることをお勧めする千綿 真美さん>
オーストラリアでは、薬局の店頭に並べられている薬のパッケージに「Hayfever & Allergy」の文字をよく目にする季節となりました。日本では全く気にもかけていなかった人でもオーストラリアで発症することもある花粉症ですが、もし何か症状を感じたらドクターの診察を受け、適切なアドバイスをもらいましょう。
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千綿 真美さん
日本語医療センターのマネージャーとして、診察時の日本語への通訳やその他医療手続きの代行も行ってくれる。
【情報提供】
〈日本語医療センター〉日本語でサポートが受けられ、海外旅行傷害保険キャッシュレスサービスも提供する。
パースとメルボルンの日本語フリーダイヤル(予約) 1800-777-313
<パース>
住所:Level 1, 713 Hay St. Perth WA 6000 (Perth Medical Centre内)
電話:08 9486 4733
ファックス:08 9321 4778
<メルボルン>
所在地: 4th Floor/250 Collins St, Melbourne VIC 3000
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ファックス:03 9654 6514
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