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フォトジャーナリスト宇田有三氏による衝撃ルポ

On The Road by.Yuzo Uda
Vol.178/2012/11

「ビルマ(ミャンマー)の『ロヒンジャ問題』を手がかりにして(3)」


漁村にはマレー系のムスリム人、パシューの人びとが暮らす

ビルマ(ミャンマー)の南部タニンダーイー州の最南端の漁村にはマレー系のムスリム人、パシューの人びとが暮らす。


 前回(本誌Vol.177)の話で、バングラデシュは現在、人口1億5,000万人の9割以上がイスラームを信奉する国だが、もともとは仏教国(ヒンズー国)だったということをおおざっぱに説明した。そのバングラデシュ東部の都市コックスバザール近辺に、隣国のビルマ(ミャンマー)からロヒンジャと呼ばれるイスラームを信奉する人びとが避難民として逃げ込んでいる。
 人口約6,000万人のビルマは、上座仏教を信奉する人びとが約85%を占め、キリスト教、イスラーム、精霊信仰などがそれぞれ5%ほどの割合だといわれている。ビルマでのイスラーム教徒(ムスリム)は、スンニ派がほとんどで、シーア派は全ムスリムのうち1%も満たないとされる。しかし、ビルマ国内では、この国特有のムスリムについて、別の区別がある。というか、ムスリムを宗教の枠組みではなく、ムスリムを「ムスリム人」としてひとつの民族として捉えている実態があるのだ。
 私はこれまで、1993年以来20年間、ビルマ全土を歩き回ってきた。その際、もちろん最大都市ヤンゴン市内でもそうだったが、出会った人に必ず投げかける問いがあった。
 「バー・ルミョー・レー(あなたは何人ですか?)」
 「ベ・ガラレー(出身はどこですか?)」
 「ブッダバダーラー?(仏教徒ですか?)」
 これらの質問の回答を直接聞くことによって、ビルマ国内の民族の多様性を肌身で感じることができる。