【前回までのあらすじ】
沢田百々子、45歳。後部座席で身動きが取れない百々子。その横で、恩田正平は車を出すようRisaに命じた。曇ったフロントガラスを手でぬぐった先に見えたものは…。
沢田百々子、45歳。後部座席で身動きが取れない百々子。その横で、恩田正平は車を出すようRisaに命じた。曇ったフロントガラスを手でぬぐった先に見えたものは…。
第37走者
マイケル
手でなぞられた跡のフロントガラスの向こうには、無数のパトカーが横向きに停まっていた。
Risaの右足はブレーキパットの上に置かれ、小刻みに震えていた。正平は、大きなため息をついて、一度目線を下した瞬間、右手に握られていた拳銃の銃口を今度は百々子に脇腹あたりに当てた。
正平は喉の奥から絞り出すように「Risa、降りろ。お前にはもう用はない。元気でな」と言った。驚いたRisaは、首から上だけを正平に向けた。ただ、正平の顔はRisaの位置からは見えなかった。
正平は「早く言った通りにしろ」と怒鳴り声をあげる。その声に反応したのか、車の外で何かが動いた。Risaはギアをパーキングに入れ、サイドブレーキを引いた。
「エンジンは止めるな。早く出ろ!」の言葉に押されるようにしてRisaは素早く車から降りた。一瞬開いたドアから外の状況を確認したいと思い、目を凝らしていた百々子だったが、暗くて何も見えなかった。ただ、Risaの体は外の世界に吸い込まれるように消えていった。
百々子は改めて「死ぬかもしれない」と思った。
正平の目は死んでいた。しかし、どうしても“生きたい”という強い思いが百々子の身体を突き上げた。次の瞬間、熱い何かが太ももに流れた。
第38走者へ続く
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