パースエクスプレスVol.116 2007年9月号

「囚われの身の人びと」

  つまり、こういうことである。  8月初め、逃亡中の元政治犯に話を聞く機会があった。彼は、民主化活動(政府の側から見ると反政府活動であるが)を続けていたため、15年間刑務所に入れられていた。しかもそのうち、10年間は窓のない独房生活であった。さらに独房生活の1年間は、両足に足枷(両足枷は鉄棒で繋がっている)を付けられ、身動きの取れない生活だったそうだ。年齢を聞いてびっくり。彼は現在、40歳である。つまり25歳から40歳までの、おそらくは人生で一番貴重な15年間の時期を、囚われの身として過ごしていたのだ。

    2005年に釈放されたが、彼は民主化運動をやめようとしない。再び当局の監視が厳しくなり、嫌がらせが始まった。それを機会に彼はタイ国境へ逃れた。現在は、国連の機関の隣に隠れ住んでいる。ビルマからのスパイによって拉致されて国内に連れ戻される恐れがあるからである。
 刑務所に入れられていた期間、体力的にはもちろん、どうやって精神的に堪え忍んだのか聞いてみた。「今、死んだら、負けだ。その事だけで生き延びました」という返事だった。おそらく言葉では簡単に表現できない経験だったのであろう。
 

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