この湾岸戦争にそれほど強い記憶はない。だが、この戦争の一方の当事国に滞在していた私が経験として得たモノ、決して忘れてはならないと感じたことをとらえ直してみたいと思い続けていた。「戦争」に対する世論の移り変わり。決して数字化できない、おぼろげな雰囲気の移り変わりを、
個人的な印象として証言しておきたい。
戦争が始まったとの実感がそれほどなかったせいか、あるいは、戦争という現象を頭で考えていたせいか、テレビのニュースを見るのを早々と切り上げた。その時は、目の前に迫った、写真作品の課題を仕上げることで頭がいっぱいだった。ジャーナリズムの一部分であるフォトジャーナリズムを専攻していたのだが、
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写真を仕上げるためにそそくさと暗室へと戻っていった。その時の私にとってこの「湾岸戦争」は、別の国・地域で起こっている現象ではなく、それよりももっと違うところに存在している、異なる次元で起こっている、想像上の出来事でしか過ぎなかった。それが正直な気持ちだった。
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