私にとって、いわゆる「湾岸戦争」の開始の第一印象は「そうか、とうとう始まったか」という、それほど驚くべき事態ではなかった。その当時の記憶も、この原稿を書きながら、写真のコンタクトシートを見ながら、
無理矢理思い出さなければならないほど印象が薄い。
イラクへの攻撃は、国連の多国籍軍という名目があるとはいえ、事実上イラクと米国の戦争である。私はそのとき、戦争を遂行している当事国にいたのだ。一方的な攻撃ではあったけれど、交戦国の一方にいたのだ。私が経験してきたこの90年代の4つの戦争の、その最初は、この「湾岸戦争」であった。
戦争当事国にいるという印象は全くなかった。中東から遠く離れた米国東海岸にいた私には、
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この湾岸戦争は自らには被害が全く及ばない、超大国米国が一方的に、弱い者イジメをする武力攻撃だった。また、それもテレビから受け取る情報のせいか、他国の戦争、他人事の戦争のようであった。事実、まさによそ事の戦争であった。それは、目の前で人が傷つかない、血が流れない、戦争であった。
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