パースエクスプレスVol.110 2007年3月号

「『デジカメ』一考−その4−」

 実は、感動したから身体を震わせたのではなく、身体の震えが脳に伝わることによって感動したのではないか。あるいは想像を越えた光景を前にして身体をコントロールすることが出来ない状態に陥り、それによって心を震わせることになったのではないか。そう、反対だったんだ。順序が逆だったんだ。身体が脳をコントロールすることもあるのだ。
 「デジカメ」の出現は、カメラのピントのオートフォーカス化をいっそう推し進め、被写体と撮し手との距離感を奪った。さらに、1/12000分というシャッター速度は一瞬のチャンスを逃す事が少なくなって、時間という感覚を薄れさせた。また、露出の自動化によって物象の陰影の感覚が弱くなり、さまざまな物質の放つ「色」のあやふやさの決定をデジタルに任せることになってしまった。たとえばニュートラルなグレーなんて、#CCCCCCって表せる。これは誰にとっても全く同じグレー色になる。

 
橋を渡る。夕暮れ間近となり、友だちを出迎える。
この子どもたちの関係は、決してデジタルデータ化できない。

 デジタル機器によって、画一化、標準化が進んでしまった。それは、その方が便利だから、効率が良いからである。ややこしいモノを排除しよう、計量不可能なモノを考えないようにしようとする、社会の要請であり、人間の脳の指令でもある。
 

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