パースエクスプレスVol.106 2006年11月号

「写真に思想と現実を写し込めるのか」

  どんなに困難な状況下でも、人びとは屈することなく、あきらめず人間らしい生活を続けている。そういう人間の本質に迫る写真を撮るのだ、と正直思う。 そこから導き出されるのは、自らの欲望の欠如である、写真を撮るという行為とその動機にどこかで、ビルマの状況が今のままでいいということが含まれていたら(たぶん含まれているだろう)、それほど悲しいことはない。苦しむ人の存在が自分の行動の動機となっている。それを考えると、写真を撮って伝えるというのは、ある意味、空しく、自分勝手な仕事である。自分が正しいと思う行動の中に、どれだけ自らの欲望を勘定に入れることができるのか。ついつい忘れがちなことである。

  自分の正義を信じて、社会の正義(公平さ、平等さ、公明さ)を信じていた頃が懐かしい。相手を糾弾すれば、事足りていたから。だが、現場を踏む回数が増え、齢を重ねる につれ、自分たちの民主主義って、それほど良いものなのか、と疑問に思い始めた。

  だからといって、これは、現在進行形で対峙しているビルマ軍事政権体制を認める、ということではない。+の反対は−、黒の反対は白、という単純なものではない。きわめてグレーな感覚を持ったプラスマイナス的な感じである。

   

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