「自分は自分の主人公?」

 市場で野菜や肉、果物を売っている人たちを見るだけで、そうやってみんな売り買いを通して支え合っているんだな、と思い、自分の肩に担いでいるカバンを見ては、カバンを作る人、運ぶ人、はたまたカバンを縫う糸を作った人の存在さえも感じとっていた。

  ほんとうに陳腐な表現になるが、自分は自分の意志や能力で生きているつもりで、文句・不平・批判を言いながら、結局は自分以外の誰かのお世話になっているんだと感じ入ってしまったのだ。
 そりゃ、世の中不条理なことや不公平なことは山ほどあるが、それに否が応でも対処していかなければならないのが人の道でもある。その際、どういう態度で退屈な日々に向かい合っていくのか。そこが考えどころであろう。

もちろん、毎日手を合わせて、感謝の気持ちを持ち続けるべきだと言っているのではない。
 
自分の存在は、自分のためだけにあるのではなく、もしかしたら他の誰かの脇役を演じているのではないかと思うことで、少しは肩肘張った生き方から解放されるのではないのか。前向きに生きる、主体的に生きる、目標を持って生きるという、教科書的な生き方からちょっと外れることができるのではないか。

  おそらくは、自分の人生の主人公は自分であるという考えにこだわっている限り、そして、自分は自分のために存在しているという、目先のことだけに囚われている限り、苦しみの軛から逃れることは出来ないのではないか。
 
ちょっと人生の主役から降りてみません、と思ってしまう。

 


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