「アジアハイウェイ−ビルマ/タイ・ルートを行く(その2)」

 一向に進まない国内の民主化のため、米国や欧州はビルマに厳しい経済制裁を課している。一時期、ビルマを域内に取り込んだASEAN(東南アジア諸国連合)加盟国は、制裁による対決から対話による民主化移行を支援した。しかし、1997年のアジアの経済危機以降、その対話の裏付けとなる経済支援を再開することができていない。政治的・経済的に苦境に陥っているビルマは、中国に接近。経済援助を受ける見返りに、中国雲南省とビルマを南北に貫くイラワジ川の浚渫工事を中国に依頼。中国はインド洋への出口としてビルマを利用できるのだ。

  一方、インドやアセアン諸国は、中国の南下を恐れる。ビルマの民主化運動家に同情的な政策をとっていたインドは、SPDCと関係を回復させた。また、インドとタイは、「対中国」で結ばれる。ビルマを南北に走るイラワジ川を切断するために、東西を結ぶ「アジアハイウェイ」を政治的に利用したいのだ。2003年10月、タイ資本によって、ビルマ側カレン州内の道路整備が始まった。タイの首都バンコクとビルマの首都ヤンゴンを10数時間で結ぶ道路を目指している。

 

 これまでのタイ政府は、ビルマ軍と直接対峙するのを怖れ、緩衝装置として、国境地帯でのKNUの活動を見逃してきた。だが、両国が経済的に直接的に結ばれた今、SPDCと和平交渉に応じるようKNUに圧力をかけている。

  交通の要所であるカレン州は、長年の紛争のおかげで鉱物資源も手つかずのまま。キンニュン失脚後、建設が中断されていた「アジアハイウェイ」整備が再開された。「アジアハイウェイ」という経済的な大動脈の完成が、カレン州内の紛争に終止符を打つ可能性が出てきた。ビルマとタイ国境では、利権が渦巻く。

 
タイや中国などの隣国、あるいは外国企業は、ビルマの民主化やカレン人の生活向上のために資本投資をするわけではない。このままだと、SPDCによるカレン人への強制労働は続き、60万人に及ぶ国内避難民は忘れられたままになる可能性が大きい。

 


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