「アジアハイウェイ−ビルマ/タイ・ルートを行く」

 翌日、小型のピックアップバスに乗り込む。約45分で、パアン郊外のタマニャ山に到着。ビルマ国内で最も有名なお坊さん、タマニャ高僧(昨年末逝去)が住んでいた丘陵地帯だ。タマニャ山の麓の僧院周辺には、参拝客目当てのバイクタクシーが数台たむろしている。

 「6000チャット(約700円)で、明日、バイクを一日貸してくれない?」
  一番まともそうなバイクを持っている運転手に話しかけた。
 「この外国人、信用出来るかな」「もしかしたらバイクを乗り逃げされるかも知れないぞ」「6000なら、俺のを貸してやろうかな」

 バイク仲間同士で、ひそひそ話が起こる。貸し出し料は魅力だが、躊躇している。そこで、ビルマ語で書かれた、政府発行の許可証を出してみた。許可証を手にした運転手達は、ちょっと心が動いたようだ。
 「この人は大丈夫だよ。宿泊先も決まっている」
  案内役の僧院の人が保証してくれた。参拝客の少ない雨季の時期のおかげだ。なんとか交渉成立。

 

 翌朝8時過ぎ、小雨降る中、僧院を後にする。まっすぐ東へ、タイ国境方面へ向かう。丘を一つ超えると、もうそこは外国人の立ち入り禁止地区。小雨は、篠つく雨に変わった。身体が冷えないように、厚めの雨合羽を羽織る。雨雲の流れに合わせて、雨は降ったりやんだり。

 1時間半ほどバイクを飛ばすと、ジャイン橋の手前にたどり着いた。橋の袂にチェックポイントがある。車は全てチェックされている。バスの乗客も全員降ろされ、一人ひとり身分証の顔写真を照合される。雨降りが好都合だった。合羽を着ることで、顔と身体を隠すことができた。まさか外国人がバイクを運転していると誰も思わないのだろう。バイクは完全にノーチェック。前を走るバイクに続いて、チェックポイントをやり過ごす。

 橋の手前で、ひと呼吸。ここまで来れば、次の町チョンドーまではすぐだ。さらにコッコレーまでは2時間ぐらい。長年の夢だった、閉ざされた「アジアハイウエイ」に個人で入り、自由に走っている。

(つづく)

 


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