寒さで身を震わせ、何度も目を覚ました。日中の気温は35度を超えるが、夜明けが近づくと、乾期のタイ西北部の密林地帯は急激に冷え込む。防寒用のジャケットを身にまとい、毛布を二枚重ねてなんとか寒さをしのぐが、それでも身体が冷えて眠れない。震えで体をずらすと、カレン語で「プダ」と呼ばれる竹簀床がミシッっと音を立てる。
 難民キャンプの朝は早い。真っ暗で冷たい空気を引き裂くように、気の早い一番鶏の鳴き声が響き渡る。みんなそろそろ起き出す頃だろうか。濃い朝霧が立ちこめる中、人の動く気配がし始める。 
 交通の便が良く、外国からの援助物資が届きやすい国道沿いの難民キャンプが多い中、タエポー一家の住むキャンプは、雨季の半年間、外の世界から遮断される山奥にある。


 もともとビルマ・カレン州の村に住んでいたカレンの人たちは、ビルマ軍の迫害を避け、密かにタイ側に渡って、タイの山の中に村を移していた。タエポーの両親もその中にいた。ビルマ・カレンであるタエポーだが、実際はタイ領で生まれ、17歳までその村で生活していた。

   


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