「夢の旅路」 

急ぎ足で石畳を踏みしめる。でこぼこ道は歩きにくいが、それは仕方ない。膝をがくがくさせながら、歩を進める。
 「夢の旅路は〜♪ 木の葉模様の石畳〜♪ まばゆく白い長い道。足跡も影も〜♪ 残さないで〜♪ 通り過ぎた〜・・・」
 知らないうちに、体を左右に揺らすのに合わせて、口ずさんでいた。「夢の旅路」か。懐かしい歌だな。久しぶりに、その懐かしさが似合う街に戻ってきた。そう、5年ぶりに中米に戻ってきた。本当はうれしいはずなのに、なぜだか分からない寂しい感覚に包まれた。最初に感じた違和感は、言葉だった。
 5年前は、片言だけど、サバイバルのスペイン語を何とか話せていた。だが今は、その怪しげな日常会話さえも、すっかり忘れてしまった。「はい」、「いいえ」というような咄嗟に出る文句は、「ホウゥ(ビルマ語で「はい」)」か「イエス」という言葉になってしまう。久しぶりの中米を回るのには、やっぱりスペイン語の復習から始めなければならないようだ。
 いつものように、中米の北の入り口、グアテマラに入る。さらに、グアテマラでも異色の地、アンティグアに滞在する。グアテマラの歴史は、それこそ侵略と苦しみの歴史。36年間続いた内戦は96年にやっと終結。

実際、アメリカ合衆国が今、世界中で行っている暴力の行使は、グアテマラを始めとする中米の歴史とまさに重なり合っている。それは、現在のイラクどころではない。「9・11/10・14/3・20」に始まる米国のアフガンとイラクへの謀略は、中米の歴史を知っている者にとってはそれほど驚きではない。 しかし、ここアンティグアというところは、そんな歴史をそれほど感じさせない観光地でもある。この地は、アメリカ大陸を南に下っていく、バックパッカーの出発点でもある。短い人で2〜3週間、長い人で3ヶ月くらいスペイン語を習得した後、ラテンアメリカへ旅立つのだ。異国の旅行はやっぱり、その土地の言葉ができるのとできないのでは大きく違うからだ。

 

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