「夢の旅路」 

 −−グアテマラというような、日本の人にはあまり知られていない場所に旅行に来るのは、何かを探し求めている人が多いようです。一体それが何か分からないうちに、ずるずると旅行を続けているような。日本で落ち着くのが怖くて、いつまでたっても自分探しを続けている感じだなあ。本当はそんな、探し求めている自分なんて無いのに、何かに憑かれたように夢を追っかけている。そんな人がいる−−
 夢のある人生は、いいものなのか。目的をもって生きるというのは、それほどすばらしいことなのか。あまりにもそのことにとらわれすぎると、生きることそのことが苦しくなるのではないだろうか。自分も、日本を出た日本人と話をしていて、そんなことをふと思う。人生の終着点は誰もが同じ。
 前向きに生きる。夢のある人生を送る。その考えはおそらく、とても好ましいことだろう。しかし、夢や目的を持って生きるというような一種のスローガン的人生は、まるで会社の売り上げや目標を達成するために、がむしゃらに働くビジネスパーソンのような気がしてならない。

 昨年の暮れ、これもふとした機会に、外務省のキャリアの人と食事をすることがあった。20代後半の人だった。私からすれば、厳しい競争を勝ち抜いてきた人だから、自分の取り組む仕事に燃えているものだと思っていた。だが、話をしているうちに、そうではないことに気づいた。私のやっているフリーランスの仕事を聞いて、「やりがいのある、自分の人生を賭ける仕事があっていいですね。私もそういう生きる目標を持って仕事がしたいです」と、お世辞ではなく、真剣に答えてくれた。
 どうしてそう思うのだろうか。その人は今、何か仕事で行き詰まっていたのだろうか。その真面目な言い方は、少々痛々しいほどだった。私がふと思ったのは、「ああ、またここにも前向き症候群の人がいる」と。

 

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