「歴史に翻弄される人びと」

 いや、それ以上に、ビルマの国内避難民が100万人に達しようが、アウンサンスーチー氏が3度目の軟禁にされようが、ビルマそのものが関心を持たれてこなかった。そんなことは、ビルマの取材を始めて以来12年間、いやと言うほど味わわされてきた。だからこそ、ビルマの片隅に個人的にこだわり続け、取材を続け、記録を続けてきた。
 それぞれの個人が自分の人生を大切にするように、他の人の人生も大切にすることがあればいい。それぞれの個人や社会に歴史があるように、他の個人にも、社会にも、歴史がある。他を、自らと同じように大切にできないものか。
 我々が教科書や書物で学ぶのは、ほんの一部の強者の歴史ばかり。この世の中、誰が、どのように優先付けで、歴史上の重要さの線引きをしているのだろうか。その選別の裏側を、今だからこそ、明らかにできないものか。

 日本の人も、日本の社会も、オーストラリアの個人も社会も、米国の人や社会も、ビルマの少数民族も、本来なら、同じ存在ではないのか。しかし、現実はそうではない。そう、違うという現実があるからこそ、同じであって欲しいとつくづく思う。甘い理想主義なのだろうか。

   


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