「歴史に翻弄される人びと」

 どうやら彼は、ちょっと重要なことを発言している様子。それも、今回のビルマ軍政と、カレン民族同盟(KNU)の和平交渉について触れている感じ。なんとか分かったのは、「これを外部に漏らしたら、それこそ俺の身が危なくなるんだからな」ということ。そう言われても、内容が分からないんだから仕方ない。いつもなら、取材しなくては!というのが頭の中にあるので、彼に、発言内容を繰り返させようと試みる。だが、今回はそんな小賢しいことをするのもいやになった。 「言わせたいだけ、言わせたらいい。それで気が済むのなら…」そいう気分だった。LMの人生そのものであった抵抗闘争が終わりに近づいたのだから、彼の取り乱しは当然であろう。

 カレン民族解放軍は1949年1月31日、ビルマ軍政に対して公式に武装抵抗を始めた。それから約半世紀以上、その闘いはつい1ヶ月前まで、世界で一番古い内戦にまでなっていた。本当なら、55年目を迎えるはずだった内戦だった。しかし、昨年12月初め、突然伝えられた停戦のニュース。カレンの指導部の一部しかそのことは知らなかった。もちろん、前線にいる兵士たちには寝耳に水だった。
 さらにこの停戦については、ビルマ国内はもちろん、ビルマ以外の世界でも、それほど大きく伝えられることはなかった。悲しいことだが、カレンの闘争史は、始まったのも、継続中も、停戦も、無視され続けている。それこそが、現在の世界歴史の主流であるのだ。

   


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