「ナヌムの家」に住み込んで3日目だった。昼食が終わった後、団らん室に足を踏み入れてみた。朴頭理(パク=トウリ)さんがひとり、薄暗い中で赤外線治療器の光を足に当てていた。横に座って、話しかけてみた。「おばあさんは、足が悪いの?」
全く反応がなかった。言葉を続けた。
「おばあさんは、・・・」
朴頭理さんはいきなり、私の取材ノートを取り上げ、正面の壁に叩きつけた。音のない部屋に朴さんの息づかいがズンと響き渡っていた。
金順徳さんは食事の後、いつも「コーヒー飲みましたか」と気遣いの言葉をかけてくれる。その心配りは、訪問者の私に対してだけでない。他のおばさんに対しても同じだ。「ほら、これもおいしいよ。“食べなさい”」と仲の良い朴玉連さんのお皿へ魚を入れてやる。
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自分のペースでゆっくりと食事をしている朴さんは、それが気に入らない。パーンと魚を払いのけ、いらない!という態度にでる。
「食べなさい。」
「いらない!」
今にも口げんかが始まるような、険悪なムードになる − 仲がいいのか、悪いのか。 |