職と食を求めて、地方から都会へ人が出てくる。そんな、フィリピンでも中米でも変わらない現実を考えていた。喰えない構図は、アジアとラテンアメリカでは同じだった。500年以上の時を経て、異なる地域と時代が重なった。まさに、「ラテンアジア」との出会いであった。
 そう「何も変わらない」現実が目の前にあった。 何も変わらないということは、1年間、彼らは苦しみ続けているのだ。何も変わらないのではなく、1年間分、いや、1日、1秒間、状況は悪くなっているのだ。「もしかしたら、明日変わるかも知れない」、という夢や希望が、その瞬間ごとにつぶされてきたのだ。

 

 苦しい生活が変わらないということは、苦しみをそれだけ余分に味わっているということなのだ。
 
誰が言ったのか忘れたが、「『共感』とは、『自分の経験や価値観で相手の気持ちを推し量るのではなく、自分がこの人の立場だったら、世の中はどういう風に見えるだろうか』と考えること」である。いろいろな現場を渡り歩き、取材慣れしてくると、ついつい、「どこも同じ状況だ、悲惨な状況はどこも変わらない」と思ってしまった。だが、違う。「変わらない」とうことは、状況は、さらに悪くなっていることなのだ。それでもその状況を撮り続けることに意味があるのか。

   


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