写真を撮るテーマはなく、ただ自由に好きなモノをとることからスタートした。さあ、そこから彼の授業は始まっていた。自由を与えられることほど苦しいことはない。自分で基準を決めなければならないからだ。私は単純に、ボストン市内を流れるチャールズ川に架かる橋を撮影した。
写真は4×5インチの大型カメラでの撮影だった。そのカメラは、今でもスタジオ撮影や結婚式の記念撮影でよく利用されている、蛇腹のついた黒い布をかぶってピント合わせをし、シャッターを切るカメラだった。いわゆる35mm一眼レフカメラは当分の間、使わせてもらえなかった。一枚ずつフィルムを装てんし、ピントや露出の決定をする。

安易にシャッターは切れなかった。 そのカメラを使うことで、写真の基礎─なぜ写真は写るのか、それを考えさせる意味もあった。
 取り扱いのやっかいなその大型カメラを使って学んだことは、ただ単に、シャッタースピードや絞り、上手な現像の仕方という技術的な面ばかりではなかった。

   


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