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フォトジャーナリスト宇田有三氏による衝撃ルポ

On The Road by.Yuzo Uda
Vol.191/2013/12

「地道な『国民の知る権利』の行使」



 税金によって得られた政府の情報は本来、国民のものだ。それを秘密にすることは限定的でなくてはならない。わたしたちは、国民に国民のものである情報を掘り起こして伝え、国民の知る権利に奉仕することが報道の使命であることを改めて胸に刻みたい。


 ポイントは、やはり「国民の知る権利」である。
 今回の法案で、多くの人の記憶から忘れ去られていた事件である「沖縄密約事件」が、あちこちで取り上げられるようになった。この密約事件の当事者である西山太吉氏(元毎日新聞記者)は、言葉だけの「国民の知る権利」に疑問を呈す。

 <「沖縄密約事件」とは「外務省機密漏洩事件」や「西山事件」とも言われる。日本と米国の間で1971年に結ばれた「沖縄返還協定」に際し、両国間で密約があることを西山氏が、外務省職員から得た情報で政府を追求したことに端を発する。その情報入手の方法の是非が、週刊誌でセンセーショナルに取り上げられ、事の本質が完全に逸らされた事件である>

 「沖縄密約事件」の本質は、国家権力を持つ者たちが、国会や裁判所で偽証し、国民を騙したことにある。また、客観的な事実がアメリカ側の資料から明白になった後も、彼らは嘘を続け、日本国民に事実をつまびらかにしないことである(西山氏は、この事件で最 高裁で敗訴した後、取材対象を守れなかったことなどを理由に、世間の風当たりを甘んじて受ける、と言う)。その西山氏が、今回の「特定秘密保護法」について、改めて強調する。


 「知る権利」が侵害され、国民主権の原理が崩壊すると言われるが、日本の「知る権利」というのは戦後の日本おいて、そんなに行使されたであろうか。 


 つまり、この「沖縄密約事件」に関して、裁判所や国会で偽証した官僚や政治家を大々的に追求するメディアはかつても今も、ほとんど無い、ということである。日本は戦後、日米同盟を基本に、『防衛・外務・治安(公安)』を中心とする官僚国家となった。それは今、政治家さえも、ましてや司法さえも刃向かえない強固な組織になってしまった。  西山氏は、こうも続ける。