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フォトジャーナリスト宇田有三氏による衝撃ルポ

On The Road by.Yuzo Uda
Vol.182/2013/03

ビルマ(ミャンマー)の「ロヒンジャ問題」を手がかりにして(6)


少数派であるシーア派のモスクで祈るムスリム人

約6,000万人いる人口の約5%はムスリムだと推定されている。その5%の中でも95%はスンニ派のイスラームである。写真は少数派であるシーア派のモスクで祈るムスリム人。


時が経つにつれビルマ人は、地主・高利貸しはインド人だ → 彼らは肌が黒い → 肌の黒いのはムスリム人だ、と意識を変えていった。それが、肌の浅黒い人(ムスリム人)に対する偏見と差別意識の生まれた理由の一つであるともいえる。
 あるとき私は、知り合いのビルマ人とヤンゴンの下町で一緒に食事をする機会があった。その際、彼は「786」の看板の掛かった食堂には入ろうとしなかった。ビルマ全国を歩くと、大きな町ではどこにでも、食堂や喫茶店に「786」と書かれた看板を見かけることがある。これは、その店がムスリムの店だという印でもある。
 「ここはムスリムの店だから入るのはやめる。彼らにお金を払いたくない」「7+8+6=21だろ。彼らは、21世紀はムスリムの時代だと信じて、キリスト教やヒンズー教、仏教までも排除する傾向にある宗教なんだよ」と私に熱く語る。彼と一緒に食事をする際には、食事代はほとんど私が払うのだが、そんなこともお構いなしだった。高等教育を受け、分別もある私の友人であったが、ムスリム人に対する差別意識はあからさまだった。ちなみに、イスラームと「786」と関係については諸説ある。
 仏教至上主義を掲げていたビルマの歴代の軍政は、ビルマ社会の裏に潜む反イスラームの傾向を利用して、団結力のあるムスリム人たちを迫害する政策を打ち立ててきた。ビルマ軍政は、ビルマ人=仏教徒という意識であった。
 今から10年前の2003年10月から11月にかけて、ヤンゴンで当局によるムスリムに対して厳しい取り締まりがあった。また、上ビルマのマンダレーやチャウセーでは、仏教徒とムスリムが衝突し11人の死者を出す事件も起こっている。