Vol..152/2010/9
「書くことと自然の癒し」

 ではということで、こういう場合はいつも「自然」に逃げるのである。自然はわれわれを癒してくれると共に教えてくれる。なんでもいい、じっと自然を観察してみることだ。木々や草花のそよぎ、風の匂い、空気の流れ、大地を這う虫。それぞれが何かに導かれるように動いていると感じる。まるで何かの秩序に導かれるように。
 誰でも経験があるだろう、空を見上げ、雲をじっと見続けて飽くなき時間を過ごしたことが。
 雲が風に流されながら次々と形を変えていく。瞬きする間に形が変わる。その変化に秩序があるようで、ないようで、宙ぶらりんとなってしまう。社会生活を営んでいると、そんな宙ぶらりんは不安感を呼び起こすものだ。だが、雲を見ている時の宙ぶらりんは、心地よくもある。

 
 私自身は、海に行くのが好きである。それも渚のある海である。波打ち際に行って、寄せては返す波をじっと見続け、いやむしろ、そのさざ波の音を飽きることなく聞くことが好きなのである。どこから来た波なのか、どこへ戻って行くのか。果たしていつまでその動きを続けるのか。ザザザ、ザップーンという波の音は、空間も時間も一緒くたにした場をそこに作り上げる。
 そんな自然の場に身を置くと、知らないことへの不安は吹っ飛び、知る知らないという次元のことはどうでもよくなる。自然は我々を赦し、包み込んでくれるのだという安心感を起こしてくれる。そういう感覚こそが、現代社会に生きるわれわれに力を与えてくれるのだ。
 書くことと自然の癒し。ちょっと強引な結びつけかな。最初の出だしが、こんな風に終わるなんて、…と思いつつ今回は終わりにしたい。
   


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