Vol..151/2010/8
「恐怖と隣り合わせの日本の戦後民主主義」

  実は、戦後民主主義とは恐怖と隣り合わせであったのである。

  だが、私自身を含めた第2の戦後世代は、そういう脆弱な民主主義を、当たり前のシステムとして育ってきた。実はそれは、仄かでか弱い体制だと全く知らずにだ。これこそ怖いもの知らずである。東西冷戦の波及や核戦争の勃発という恐怖ではない。

  連続しているように見える世代間に断絶があるとすれば、恐怖が内に潜んでいるのか、あるいは外にあるのか、その違いの認識であろう。「恐怖からの自由」は違った形で現れる。今の民主主義があたり前だと感じているわれわれは、いつどんな形でこの政治システムが崩壊していくのか、全く予想も予感も予知もできない。その能力さえない。

  私自身この20年近く、東南アジア最後の軍事政権国家ビルマ(ミャンマー)を取材しているせいか、政治体制だけでなく、最近の日本社会の中に非寛容さと排外主義の高まりを見るにつけ、なにやら今の日本の自由と民主主義の崩壊の危機を感じてしまうのである。それこそが恐ろしい。

 
ビルマとタイ国境にある「クアンユムの戦争博物館」。第2次大戦時の無謀なインパール作戦の敗戦後、ビルマからタイに逃げてくる旧日本軍兵を助けた地元のタイ人が、兵士の遺品をもとに作った。
   


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