ところで、ビルマといえば仏教国といわれている。しかも上座仏教(ちょっと前までは、日本の大乗仏教と区別するためか、「南方上座部仏教」とも記述されていた)である。ところが、上座仏教を信奉し、「涅槃」への到達を目指すビルマの人びとは、戒律が厳しいこの宗教だけで生活しているのではない。実は、「表」の仏教に対応して、ソフトな「裏」の精霊信仰である「ナッ神」というのが、実は存在している。厄除けや現世利益を求める、実生活上の信仰体系が存在しているのだ。
ビルマ最大の都市ラングーン(ヤンゴン)の街を歩くと、植民地時代に整備された区画の整った各通りには、家の端や街路樹に縦横奥行き50cmの小祠を、時折見かける。それが「ナッ神」である。
仏教は来世を志向し、ナッ信仰は現世に関わる。同じ手を合わせる行為だが、仏教では拝み、ナッ神では祈るのである。ビルマ人は、仏教やナッ神の信仰を日常や儀礼の様々な場面に応じて使い分け、生活している。
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ビルマを訪れ、このナッ神の小祠に気づくようになれば、ビルマ観光は深まったといえるのではないかと思う。
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