3月末、連日気温が35度を超えるタイの首都バンコクに戻ってきた。日本では肌寒い日々が続いていたが、灼熱のバンコクは相変わらず蒸し暑い。だが、暑いのは気候だけではなかった。政治も熱くなっていた。
バンコクの街中では、もっぱら「赤シャツデモ」の話題ばかりを耳にすることになった。実際、都心の中心部が真っ赤なシャツの勢力に占拠されてしまっていたのだ。
タイの内政はこの数年、ごたごた続きである。その政治の混乱の原因は、2001年に政権についたタクシン首相が2006年9月、クーデターによってその座を追われることに始まった。タクシン(元)首相は、その在任中に大規模なばらまき政治や汚職疑惑によって失脚し、資産は凍結され、裁判にかけられることになった。だが、彼には人気があった。クーデターが起こった年に行われた総選挙では、失脚したはずのタクシンを母体とする政党が勝利する。だが、司法の場で裁かれることになったタクシン氏は2008年8月、政治と司法のすき間をぬって海外に出国する。彼は、英国、中東、カンボジア、ロシアなどを点々としながら事実上の亡命生活を続け、国外から自らの勢力に政治的な指示を出すことになる。 |
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10万人が集まった3月27日の赤シャツの集会。太陽の照りつける炎天下にもかかわらず、人びとは気勢を上げる。 |
プミポン国王の肖像画の前で、タクシン(元)首相のお面をつけた赤シャツの男性がおどける。 |
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